遺産分割Q&A

寄与分について教えて下さい。

寄与分とは、被相続人(亡くなった人)の財産形成・維持に特別の貢献した相続人がいるときに、相続人間の公平を図るため、相続分を調整する制度です(民法第904条の2)。
例えば、被相続人が特定の相続人と協力して事業を営んで財産を築き上げた場合、病気になった被相続人を特定の相続人が介護して財産を消費しなくてすんだ場合などに寄与分が問題になります。

 

◆寄与分が認められる場合の具体的相続分の計算方法
寄与分が認められる場合の具体的相続分の計算方法は次のとおりです。
①「みなし相続財産」=「相続開始時の相続財産」-「寄与分」
②「一般の具体的相続分」=「みなし相続財産」×「各自の法定相続分」
③「寄与者の具体的相続分」=「一般の具体的相続分」+「寄与分」

 

例えば、被相続人の遺産が5000万円、相続人が息子と娘の2人、娘が長年にわたり被相続人の療養看護をしており、その寄与分が1000万円と認められる場合、息子と娘の具体的相続分は次のとおりになります。
①「みなし相続財産」:5000万円-1000万円=4000万円
②「一般の具体的相続分」(息子の具体的相続分):4000万円×1/2=2000万円
③「寄与者の具体的相続分」(娘の具体的相続分):2000万円+1000万円=3000万円

 

◆寄与分が認められる者
寄与分は「共同相続人」にのみ認められます(民法第904条の2第1項)。
したがって、相続人でない内縁の妻や相続人の妻などは、どんなに被相続人の財産形成・維持に貢献したとしても、寄与分は認められません。
ただし、相続人以外の者の寄与が相続人の寄与と同視できるような場合(例えば、長男の妻による被相続人の療養看護が長男の妻として長男と協力して行われたような場合)には、相続人以外の者(長男の妻)の寄与を相続人(長男)の寄与として考慮することができる場合があります(盛岡家審昭61・4・11家月38・12・71、神戸家豊岡支審平4・12・28家月46・7・57)。

 

cf.「代襲相続人は寄与分を主張できますか。

 

◆寄与分が認められる事例
寄与分が認められるためには、①相続人の特別の寄与により②被相続人の財産が維持または増加したことが必要になります。

 

①民法上は「被相続人の事業に関する労務の提供または財産上の給付」と「被相続人の療養看護」が挙げられていますが、これらに限らず「特別の寄与」と評価されれば寄与分が認められることになります。
「特別の」寄与ですから、通常の夫婦の協力扶助義務の範囲内の行為や通常の親子・親族の扶養義務の範囲内の行為は認められません。また、他の相続人も同等の寄与をしている場合にも寄与分は認められません。
「被相続人の事業に関する労務の提供または財産上の給付」では、長期間にわたり無償またはこれに準ずるような報酬しかもらわずに被相続人の事業を手伝っていたような場合に「特別の寄与」と評価できるでしょう。
「被相続人の療養看護」では、単にお見舞いに行っていたということでは足りず、被相続人に付き添って療養看護していたような場合に「特別の寄与」と評価される場合が多いと思います。

 

②「被相続人の財産の維持または増加」が必要になりますので、被相続人が精神的に満足しただけでは寄与分は認められないことになります。
例えば、本来であればヘルパーを頼まなければならないところ、相続人が被相続人に付き添って療養看護したことによりヘルパーを頼まなくて良くなり、ヘルパー費用の支出を免れた場合などに寄与分が認められることになります。

 

◆寄与分の計算方法
寄与分は、寄与の時期、方法と程度、相続財産の額その他の一切の事情を考慮して定められることになります(民法第904条の2第2項)。
例えば、「被相続人の事業に関する労務の提供」では標準賃金に基づき計算したり、「被相続人の療養看護」ではヘルパー費用に基づき計算したりすることが考えられます。

 

◆寄与分の協議がまとまらないとき
寄与分について協議がまとまらないときは、調停や審判によって定めることになりますが、審判では上記のとおり寄与の時期、方法と程度、相続財産の額その他の一切の事情を考慮して定められることになるため、裁判所の裁量が広く認められています。

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