再転相続と相続放棄

叔父Aが亡くなり,叔父の相続人となった父Bも,叔父Aの相続について承認又は放棄をしないままに死亡した場合には,父Bの相続人である子Cは,叔父Aの相続についても相続人となります。

このことを「再転相続」といいます。

再転相続の場合,子Cが父Bの相続を承認する一方で,叔父Aの相続を放棄することは可能であり,叔父Aの相続について相続放棄する場合には,Cが「自己のために相続の開始を知った時から」3か月以内に相続放棄をすることになります。

再転相続における相続放棄の期間

では,例えば,父B及び子Cは,叔父Aとは疎遠であって,実は,父Bが死亡する1年前に,叔父Aは亡くなっていたが,そのことについて父B及び子Cは知らず,そのまま父Bが死亡して父Bの相続については子Cは承認していたところ,その後に1年以上経ってから,叔父Aの相続人として子Cに対して叔父Aの借金の請求書が届いたケースにおいて,子Cは叔父Aの相続を放棄できるのでしょうか。

子Cが「自己のために相続の開始を知った時」(民法916条)の起算点はいつになるのかが問題となります。

考え方は2つあります。

1つは,父Bの相続開始時が起算点になるという考え方です。この考え方によれば,子Cは叔父Aについて相続の開始があったことを知っていたかは関係なく,父Bの相続の開始から3か月以内に叔父Aの相続放棄をしなければいけませんので,父Bの相続開始から1年以上経っている上記ケースでは,子Cは叔父Bの相続について放棄はできないことになります。

もう1つは,子Cが叔父Aに関する相続を知った日が起算点になるという考え方です。この考え方によれば,子Cが叔父Aの借金の請求書を受け取った日が起算点になるので,その日から3か月以内であれば相続放棄をすることができます。

上記2つの考え方のうち,従前は父Bの相続の開始を知った時が起算点になるというのが通説的な立場でした。この立場からすると,叔父Aの相続開始の事実や叔父Aの債務の存在等は,父Bの相続の際の調査事項の一部にすぎないという訳です。

この問題について,判断を示したのが,最高裁令和元年8月9日民集73巻3号293頁です。
最高裁は,結論として「民法916条にいう「その者の相続人が自己のために相続の開始があったことを知った時」とは,相続の承認又は放棄をしないで死亡した者の相続人が,当該死亡した者からの相続により,当該死亡した者が承認又は放棄をしなかった相続における相続人としての地位を,自己が承継した事実を知ったときをいうものと解すべきである」と判示しました。


すなわち,上記ケースに即していえば,子Cが叔父Aの借金の通知書を受け取った日が相続開始時点となりますので,子Cは叔父Aの相続放棄をすることができます。

まとめ

全く疎遠だった親族からの再転相続によって,自分に対して身に覚えのない借金の催促が来るということは,十分あり得ることです。
被相続人が亡くなったときから3か月を超過していても,相続放棄ができる場合がありますので,まずは弁護士にご相談ください。

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