在日韓国人を被相続人とする遺産分割調停、相続放棄について
今回は、在日韓国人の方ががお亡くなりになった場合の遺産分割調停や相続放棄の手続きについて、解説します。
1.日本で手続ができるか
在日韓国人の方が死亡した場合、まずは、日本で手続を進められるかどうかが問題になります。
被相続人の最後の住所地が日本であれば、日本に管轄が認められますので、日本で家事調停事件(審判事件も)を進めることができます。
2.どこの国の法律が適用されるのか
在日韓国人の方が死亡した場合、「どこの国の法律が適用されるのか」という点も問題になります。
「法の適用に関する通則法」36条によれば、「相続は被相続人の本国法による。」と定められています。本国法とは、国籍のある国のことです。
したがって、韓国籍の在日韓国人の方の場合には、韓国法によって遺産相続の手続きが進められます。
3.韓国法の法定相続人、法定相続分
それでは、韓国法では、誰が相続人となるのでしょうか。そして、各相続人の相続分はいくらでしょうか。
日本の法律で規定される法定相続人や相続分とは異なるので、確認しましょう。
3-1.韓国民法における相続人
韓国民法における相続人の範囲は、以下の通りです。
- 第1順位 被相続人の直系卑属及び配偶者
- 第2順位 被相続人の直系尊属及び配偶者
日本法と異なり、被相続人の兄弟姉妹は、配偶者及び先順位者がいない場合のみ相続人となれます。さらに、兄弟姉妹を含めて先順位者や配偶者がいないときは、被相続人の4親等内の傍系血族も相続人になることができます。
また、法定相続分は均分ですが、配偶者のみ、直系卑属や尊属の1.5倍になります。
3-2.相続分計算の具体例
たとえば、相続人が配偶者と3人の子どもであるケースを考えてみましょう。この場合の相続分は、1.5:1:1:1になります。結果的に配偶者の法定相続分が3分の1、子どもたちそれぞれの相続分が9分の2ずつとなります。
このように、韓国民法では、法定相続人や法定相続分が日本の法律とは異なります。
4.相続放棄について
遺産分割調停で述べたところと同様、在日韓国人の方が死亡した場合、その最後の住所地が日本であれば、日本に管轄が認められますので、日本で相続放棄の手続を進めることができます。
この場合も、遺産分割調停で述べたところと同様、韓国法が適用されるのが原則になります。
韓国法でも、相続放棄の制度が認められているので、遺産を相続したくない場合には放棄することが可能です。
ただし、韓国民法の場合、被相続人の子が全員相続放棄をしたら、被相続人の孫が第1順位の相続人になります。(日本では、被相続人の子どもが相続放棄をしても、孫は相続しません)。孫が相続をしたくなければ、孫も相続放棄する必要があります。
また、韓国民法では第4順位の相続人がいます。子どもや親、兄弟姉妹が全員相続放棄をすると、いとこなどが相続人になる可能性があります。第4順位の相続人まで相続放棄しないと、全員が相続から免れることができないので注意が必要です。
なお、被相続人が生前、「相続準拠法を常居住地法である日本法にする」旨の遺言を残していれば、相続放棄について、日本の民法が適用されることになります。この場合は4親等以内の傍系血族は相続人とはなりません。
5.遺産相続のご相談は「まるっと相続」まで
在日韓国人を被相続人とする場合の遺産相続においては、日本と異なるルールが適用される場合があります。遺産相続についてお困りごとがある場合は、金沢の「まるっと相続」までお気軽にご相談ください。