相続不動産の評価方法について
相続手続きを進める際には「不動産の評価方法についての知識」が必要です。遺産分割時と相続税申告時とでは異なる評価方法が適用されるので、それぞれについての正しい知識をもって評価額を計算しましょう。
本稿では相続における不動産の評価方法をお伝えします。
1.遺産分割における不動産評価方法
まずは遺産分割をするときの不動産評価方法をみていきましょう。
遺産分割を行う際の不動産評価は、原則的に「時価」を基準とします。すなわち、実際に不動産を売却したときに売れそうな価額(市場価額)によって不動産を評価します。
1-1.評価基準時
遺産分割における不動産の評価基準時は「遺産分割時」です。つまり、遺産分割協議を行う際には、遺産分割が成立するときの不動産の時価をもって評価する必要があります。
1-2.時価の調べ方
不動産の時価は、「簡易査定」によって調べることができます。
簡易査定とは、不動産会社へ簡単に査定してもらう方法です。
お近くの不動産会社やネット上の一括査定などを利用すると、各社から不動産の評価書類を発行してもらえます。ただ、不動産会社によっても査定額が異なるので、複数社に査定を出して平均値をとるのが良いでしょう。
不動産会社による簡易査定に納得できない場合や相続人同士で意見が合わない場合、最終的に不動産鑑定をしなければなりません。ただし、不動産鑑定を行うと数十万円の費用がかかるので、できれば簡易査定をもとに合意する方が経済的でしょう。
1-3.特別受益の評価基準時
相続人が不動産の生前贈与を受けていた場合には、特別受益の持戻計算を適用できます。
その場合、不動産を評価しなければなりません。
特別受益の持戻計算を行う際にも、不動産については時価を基準に評価します。ただし、評価基準時が遺産分割とは異なります。
特別受益の持戻計算における不動産評価時は、「相続開始時」です。相続開始から相当時間が経過して遺産分割を行う場合、相続開始時と遺産分割時とで時価が異なる可能性もあるので、相続開始時の時価を調べて評価しましょう。
1-4.遺留分侵害額請求の評価基準時
遺留分侵害額請求が行われる際にも、不動産の評価額を調べなければならないケースがあります。不動産が生前贈与されたり遺贈されたりした場合です。
遺留分侵害額請求における不動産評価も時価によって行い、評価基準時は相続開始時と理解されています。
つまり、遺留分侵害額請求を行う際には、請求時ではなく相続開始時の時価を調べて実際の侵害額の計算をしなければなりません。
2.相続税申告における不動産評価方法
次に、相続税を申告する際の不動産評価方法をみていきましょう。
相続税申告に適用される不動産評価方法は、土地と建物で異なります。
2-1.土地の場合は相続税路線価
土地の場合には「相続税路線価」によって評価します。
相続税路線価とは、市街地的な場所にある道路に面した土地の1平方メートルあたりの単価です。その単価に土地の面積を掛け算することにより、土地全体の価額を求めます。
たとえば、相続税路線価が15万円の土地で40平方メートルあれば、その土地の評価額は600万円です。
相続税路線価のない場所は評価倍率
全国の土地の中には、相続税路線価の設定のない場所もあります。そういった地域では「評価倍率」という方法で土地評価額を算定します。評価倍率とは、土地の評価額を算定するための一定の係数です。固定資産税評価額に各地の評価倍率をかけ算すると、その土地の相続税評価額を求められます。
2-2.相続税申告の際の評価基準時
相続税申告の際に適用される不動産の評価基準時は「相続開始時」です。路線価は毎年改定されるので、被相続人が死亡した年の相続税路線価を調べてあてはめましょう。
2-3.相続税路線価の調べ方
相続税路線価は、国税庁のサイトから調べることができます。全国の相続税路線価や評価倍率を年度ごとに調べられるので、利用してみてください。
https://www.rosenka.nta.go.jp/
2-4.小規模宅地の特例について
土地の場合、小規模宅地の特例の適用によって大きく評価額を減らせる可能性があります。
小規模宅地の特例とは、一定の宅地について相続税評価額を50%または80%減じてもらえる制度です。不動産の使用目的などによって適用要件や効果が変わってきます。
減額率が高いため、相続税を節税するには小規模宅地の特例の適用が必須ともいえるでしょう。相続税の申告時には忘れないように小規模宅地の特例を適用しましょう。
2-5.建物の場合には固定資産税評価額
建物には相続税路線価の設定はありません。この場合、基本的に固定資産税評価額を適用します。
固定資産税評価額は3年毎に改定されるので、相続開始時の固定資産税額を調べて当てはめましょう。
2-6.固定資産税評価額の調べ方
固定資産税評価額は、固定資産評価証明書を取得すると調べられます。不動産の所在地の役所へ固定資産評価証明書を申請すれば発行してもらえます。
2-7.賃貸に出している場合の評価方法
不動産を賃貸に出している場合、土地や建物の評価額が下がります。
土地の場合には借地権割合、建物の場合には借家権割合が差し引かれるからです。
相続税路線価は時価の約8割、固定資産税評価額は時価の約7割であり、そこから借地権割合や借家権割合を引けるので、不動産を賃貸すると現金で資産をもっているより大きく節税できる可能性があります。
また、土地には前述の通り小規模宅地の特例を適用できるケースもあり、さらに評価額を下げられるケースも少なくありません。
不動産は相続税の節税対策に有効な資産といえるでしょう。
金沢の「まるっと相続」では、各種の専門家が相続対策に熱心に取り組んでいます。不動産を相続してお悩みの方がおられましたらお気軽にご相談ください。