相続時精算課税制度について

「相続時精算課税制度」とは、親や祖父母などの直系尊属が18歳以上の子どもや孫へ贈与したとき、贈与者1人につき最大2500万円まで贈与税が非課税になる制度です。

ただし、相続時精算課税制度にはメリットだけではなくデメリットやリスクも存在します。課税の繰り延べに過ぎない点や、暦年贈与できなくなることなどいくつかの点に注意すべきです。

1.相続時精算課税制度とは

相続時精算課税制度とは、親や祖父母などの直系尊属から18歳以上の子どもや孫へ財産を贈与したとき、贈与者1人につき最大2500万円まで非課税となる制度です。

2500万円を超える贈与分には一律で20%の贈与税がかかります。

また、贈与された財産は相続の際に遺産に組み入れられ、相続税課税の対象になります。

相続時精算課税制度は「非課税になる制度」ではなく基本的に「税金支払を未来へ繰り延べてもらう制度」に過ぎません。原則として、「相続」税の節税にはならないと思っていただいた方がよいと思います。

1-1.対象にとなる財産の種類

相続時精算課税制度では、贈与する財産に制限がありません。現預金はもちろん、車や不動産、株式など何でも控除の対象になります。

1-2.年数の制限もない

相続時精算課税制度には年数の制限もありません。1年で2500万円の枠を使ってもかまいませんし、2500万円に達するまでは、何年にわたって贈与しても贈与税を免除してもらえます。

2.相続時精算課税制度を適用できる人

相続時精算課税制度を適用できるのは、以下のような人です。

  • 贈与者…贈与した年の1月1日において60歳以上の親や祖父母、曽祖父母など
  • 受贈者…贈与を受けた年の1月1日において18歳以上の者のうち、贈与者の直系卑属(子や孫など)である推定相続人または孫

3.相続時精算課税制度のメリット

相続時精算課税制度のメリットは以下のようなものです。

3-1.一度にまとまった贈与ができる

相続時精算課税制度を適用すると、2500万円までの贈与であれば贈与税がかかりません。

原則的な暦年課税制度なら一度に2500万円も贈与すると2390万円分に贈与税がかかってしまいます。

相続時精算課税制度を適用すると、一時にまとまった贈与を行っても課税されないメリットがあるといえるでしょう。

3-2.相続時の時価が上がると節税できる

相続時精算課税制度を適用して贈与すると、節税できる可能性があります。

有効なのは、贈与時よりも相続時の評価額が上がった場合です。

相続税は基本的に「相続発生時の評価額」をもとに計算しますが、相続時清算課税制度を適用する場合には「贈与時の評価額」を適用します。

よって、贈与時よりも相続時の評価額が高いと、贈与時の評価額まで評価を落とせて相続税が節税されるのです。ただし、相続時に対象財産の評価額が下がる場合もありますし、そもそも対象財産が存在しない場合さえありますので、ギャンブルの要素が強いと言わざるえません。

4.相続時精算課税制度のデメリットやリスク

相続時精算課税制度にはデメリットやリスクもあるので、確認しましょう。

4-1. 暦年贈与を利用できなくなる

相続時精算課税制度を選択すると、暦年課税制度は適用されなくなります。年間110万円の贈与税の基礎控除がなくなるので、相続税の節税効果が高い暦年贈与ができなくなります。

暦年贈与と相続時精算課税制度は選択制です。状況に応じていずれが適しているか、判断しましょう。

4-2. 110万円以下の贈与でも贈与税の申告が必要になる

相続時精算課税制度を選択すると、制度選択以降は、110万円以下の贈与でも贈与税の申告が必要になります。勘違いされている方も多い点ですが、2500万円の範囲まで何もしなくてよくなるというわけではありません。

4-3. 相続時に対象財産の評価額が下がると損になる

先にも述べましたが、相続時に対象財産の評価額が下がる場合や、そもそも対象財産が存在しなくなった場合は、かえって税金が高くなってしまいます。

4-4.小規模宅地の特例を適用できない

相続時精算課税制度を適用すると、小規模宅地の特例を適用できません。

小規模宅地の特例とは、遺産の中に一定の条件を満たす土地が含まれている場合、土地の評価額を50%または80%減額できる特例で、相続税の節税方法として極めて大きいです。

相続時精算課税制度ではこれを適用できないので、かえって相続税が上がる可能性があります。

5.相続時精算課税制度を適用する方法

相続時精算課税制度を適用したい場合には、贈与税の申告をしなければなりません。

申告時に「相続時精算課税選択届出書」を添付する必要があります。

必要事項を記入して申告書と一緒に提出しましょう。

これを提出すると相続時精算課税制度が適用されるので、2500万円分までは贈与税がかからなくなります。

6.節税対策は専門家へ相談を

相続時精算課税制度については、遺産総額が少なく、将来相続税が発生しない見込みがある場合(今回、贈与しようとする財産も含めてです。)で、一度にまとまった財産を贈与する必要がある場合には有効ですが、それ以外については、慎重な対応が必要だと思います。

相続税や贈与税の申告、節税対策をするには、専門知識が必要です。今回、ご説明した相続時精算課税制度などは使い方を誤ると、かえって税額が上がってしまうリスクも発生します。金沢のまるっと相続に、まずはお気軽にご相談ください。

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