遺留分侵害額請求と相続税の関係について

遺留分侵害額請求をすると、請求者は、遺留分侵害額に相当する金銭を受け取れます。一方で、請求された側は、一定の金銭を払わねばなりません。

そもそも、遺留分には相続税の問題が生じるのでしょうか?また、相続税の納付後に遺留分侵害額請求が行われた場合、相続税の過不足はどのように処理されるのでしょうか。

この記事では、遺留分侵害額請求と相続税の関係について解説します。
遺留分侵害額請求を行う方や請求された方は、ぜひ参考にしてみてください。

1.遺留分侵害額請求とは

遺留分とは、一定の相続人(遺留分権利者)について、被相続人(亡くなった方)の財産から法律上取得することが保障されている最低限の取り分のことです。

被相続人が財産を遺留分権利者以外に贈与又は遺贈し、遺留分に相当する財産を受け取ることができなかった場合、遺留分権利者は、贈与又は遺贈を受けた者に対し、遺留分を侵害されたとして、その侵害額に相当する金銭の支払を請求することできます。これを遺留分侵害額の請求といいます。

兄弟姉妹以外の相続人には、最低限の遺産取り分である「遺留分」が認められます。

2.遺留分侵害額請求と相続税申告納付の期限

遺留分侵害額請求には、期限があります。
遺留分侵害額の請求は,遺留分に関する権利を行使する旨の意思表示を相手方にする必要がありますが,内容証明郵便等により意思表示を行う必要があります。この遺留分に関する権利を行使する旨の意思表示をしないときは,遺留分侵害額請求権は,相続の開始及び遺留分を侵害する贈与又は遺贈があったことを知った時から1年で(又は相続開始の時から10年を経過したとき)時効によって消滅します。

また、相続税の申告書の提出・納付についても、期限があります。いずれも相続の開始があったことを知った日(通常の場合は、被相続人の死亡の日)の翌日から10か月目の日までに行わなければなりません。

遺留分侵害額請求の期限と相続税の申告・納付期限は一致しないので、相続税の申告後に遺留分侵害額請求が行われて支払いが実行されるケースもよくあります。

3.遺留分にも相続税がかかる

権利者が遺留分侵害額請求を行った場合、受け取った遺留分侵害額に相当する金銭にも相続税の問題が生じるのでしょうか?

結論的に、受け取った遺留分侵害額に相当する金銭にも相続税がかかります。同額を受け取ったときには、受け取った金額に応じて相続税を支払わなければなりません。

一方、受け取った遺留分侵害額に相当する金銭を支払った場合には、それに応じて相続税が減額されます。

以下ではパターン別に、遺留分侵害額が行われたときに相続税をどのようにして支払うのか、みていきましょう。

4.遺留分の金額がまだ確定していない場合

まずは、相続税申告時に遺留分の金額がまだ確定しないケースについてご説明します。

この場合には、すでに遺留分侵害額請求が行われていたとしても、遺言どおりの内容で相続税を申告・納付します。
当初申告において、未分割申告とはしません。

たとえば、長男にすべての遺産を遺贈されて次男が何も受け取れなかったとき、次男が遺留分侵害額請求をしていたとしても、まだ、遺留分の金額が確定していなければ、長男がすべての遺産を取得したことを前提にして相続税を計算します。

5.申告期限までにすでに遺留分の金額が確定した場合

遺留分の金額が確定し、金銭が支払われた後で相続税の申告納付をする場合、相続人らや受遺者は、遺留分の金額を反映させた取得財産に応じて相続税を申告納付します。

たとえば、Aが死亡し、相続人はAの子であるB、Cの2名のみだった場合、Bに全額の遺産を遺贈する遺言書があり、CがBに対して遺留分侵害額請求をしたとしましょう。
このケースでは、Cは遺産の4分の1の遺留分侵害額を受け取ることができます。遺留分侵害額請求の結果、Bが遺産の4分の3を、Cが遺産の4分の1に相当するの遺産や金銭を受け取ったことになります。
したがって、Bがかかる相続税のうち4分の3を支払い、Cがかかる相続税の4分の1を支払います。

6.相続税の申告期限後に、遺留分の金額が行われた場合

次に、申告期限後に、相続税の申告と納付が行われ、その後に遺留分の金額が確定し、金銭が支払われたケースについてです。
相続人らや受遺者は、遺留分の金額を反映させた取得財産に応じて、相続税の申告や納税を当初申告から修正しなければなりません。
そのままにしておくと、遺留分侵害額の請求者は遺留分の金額について相続税を支払っていないことになり、逆に、侵害していた側は相続税を払いすぎた状態になってしまいます。

相続税納付後に、遺留分の金額が確定し、支払われた場合の清算方法は以下のとおりです。

6-1.遺留分を侵害していた側の対処方法

遺留分を侵害していた側の方は、遺留分の金額を支払った分、負担すべき相続税の金額が下がります。
相続税を払いすぎた状態になるので、取り戻さねばなりません。
そのためには、税務署へ「更正の請求」を行う必要があります。
更正の請求が認められると、過払いとなった相続税が還付されます。

なお、更正の請求は、遺留分侵害額の確定を知った日の翌日から4ヶ月以内に行わなければなりません。

6-2.遺留分の請求者

遺留分の請求者は、遺留分侵害額請求によって、一定の金額が受け取ります。
それに伴い、相続税の負担が生じたり、支払うべき相続税額が増額したりします。
この場合には、「修正申告」や「期限後申告」により、不足している相続税を申告納付しなければなりません。
相続税を納付したけれども足りなくなった場合には、修正申告を、まだ、相続税の申告納付をしていない場合には期限後申告を行いましょう。
なお、この場合には、期限後申告ではありますが、無申告加算税や延滞税はかかりません。

7.相続税の相談は、専門家に

遺留分侵害額請求を行うと、その後に相続税の問題が発生する場合があります。素人対応では間違ってしまうケースもあるかもしれません。
遺留分侵害額請求が問題になった際には、金沢の「まるっと相続」までお気軽にご相談ください。

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