自分で遺言による相続登記をする方法を司法書士が解説

不動産を所有していた人が亡くなったら、相続人等に名義変更しなければなりません。これを相続登記と言います。以前は所有権などの権利の登記をすることは、文字通り権利であって、義務ではありませんでした。しかし、令和6年4月1日から、この相続登記は義務化されます。相続登記を怠った場合、10万円以下の過料の対象となります。

今回は、遺言による相続登記の方法について、司法書士が解説します。

1.まずは遺言の種類を確認します。

遺言による相続登記で、まず始めにすることは、遺言の種類を確認します。遺言の種類によって、手続きが違うからです。遺言には以下のようにいくつか種類があります。

普通方式遺言

  • 自筆証書遺言
  • 公正証書遺言
  • 秘密証書遺言

特別方式遺言

  • 死亡の危急に迫った者の遺言
  • 伝染病隔離者の遺言
  • 在船者の遺言

今回は、一般的な自筆証書遺言と公正証書遺言について、説明いたします。

2.自筆証書遺言の場合※法務局保管の場合

自筆証書遺言を法務局で保管していた場合、家庭裁判所での検認が不要になります。

遺言者が死亡した後、法務局(遺言書保管所)で、遺言書が預けられているかを確認します。全国すべての遺言書保管所から行うことができます。遺言書が保管されていることがわかったら、次に、遺言書の内容の証明書を取得します。これも、全国すべての遺言書保管所から行うことができます。この証明書は、遺言情報証明書と言い、登記手続きやその他相続手続きに使用することができます。

3.自筆証書遺言の場合※法務局保管でない場合

自筆証書遺言が法務局で保管されていなかった場合は以下のとおりです。

まず、遺言書が封筒に入っていて、封に押印がある場合(封印)は、家庭裁判所で相続人等の立会いがなければ、開封してはいけません。もし、家庭裁判所外で開封した場合は、5万円以下の過料に処せられますので、ご注意ください。

また、遺言をした人が亡くなった後、自筆証書遺言を発見した場合、家庭裁判所にて、「検認」という手続きをしなければなりません。この検認手続きをしないで遺言を執行した場合、5万円の過料に処せられますので、ご注意ください。検認手続きの中で、相続人全員に検認があることのお知らせをするため、相続人を確定させる必要があります。

相続人を確定させるには、亡くなった方の、生まれてから亡くなったときまでの、戸籍を集めなくてはなりません。この戸籍は、亡くなった方が本籍を置いていた市町村で取れます。途中で他の市町村に、本籍を動かしていた場合は、その市町村で取る必要があります。郵送でも取る事が出来ますので、インターネットで「〇〇市 戸籍 郵送」で検索してみてください。なお、戸籍については、戸籍謄本と戸籍抄本がありますが、亡くなった方の戸籍の場合は、相続人を調べたいので、他の人の記載がある戸籍謄本を取得してください。また、戸籍には、原戸籍や、除籍謄本など、色々種類があるので、窓口では、「相続手続きで使いたいので、〇〇の生まれてから亡くなったときまでの戸籍全てが欲しい」と、用途と理由を伝えると間違いが少ないです。郵送の場合は、メモ書きを添えるなどして、伝えてください。

これで、亡くなった方の、生まれてから亡くなったときまでの戸籍が集まったら、今度は、各相続人の戸籍を取ります。(関連記事:相続人と相続分)なお、相続人によって必要な戸籍類が違いますので、ご注意ください。自分以外の戸籍は、それぞれ、各自に取ってもらうのがいいでしょう。各相続人には印鑑証明書を取ってきてもらう必要があるので、そのついでに、戸籍も取ってきてもらいましょう。なお、各相続人の戸籍は、戸籍抄本で大丈夫です。戸籍抄本はその相続人だけが載っています。

さあ、これで集まった書類は以下になります。

  • 亡くなった方の生まれてから亡くなったときまでの戸籍謄本
  • 各相続人の戸籍抄本等
  • 不動産を取得する人の住民票(検認では必要ありませんが、登記申請時に必要になるので、ついでに取得しておきましょう。)

これら書類と自筆証書遺言を持って、遺言者の最後の住所地の家庭裁判所で検認の申立をします。申立費用800円で、収入印紙で納めます。その他郵便切手を添付しますが、、家庭裁判所によって違いますので、詳しくはその家庭裁判所にご確認ください。

申立が終わったら、後日、家庭裁判所から検認の日などのお知らせが届きます。

検認当日は、集まった相続人等立会いの上、遺言書が開封されます。

これで検認手続が完了し、以下の書類が揃いました。

  • 検認した自筆証書遺言
  • 相続関係の戸籍等

4.法務局で登記事項証明書(登記簿謄本)を取得します。

法務局で相続の対象となっている不動産の登記事項証明書を取得します。不動産の特定は、毎年役所から送られてくる、固定資産税納税通知書に、課税明細書がありますので、それを参考にします。土地であれば、所在地と地番、建物であれば、所在地と家屋番号がわかれば、取得できます。

5.登記申請書を作成します。

さあ、これでいよいよ、相続登記に必要な書類が揃いました。

登記申請書の作成に入ります。

一例です。内容に応じて変更してください。

登記申請書

登記の目的 所有権移転
原   因 令和〇年〇月〇日相続 ※亡くなられた日
相 続 人 (被相続人 金沢〇太郎) ※亡くなられた人の氏名
      金沢市〇町〇番〇号 金沢〇子 印 ※不動産を取得する人の住所と氏名
連絡先の電話番号  〇〇〇〇-〇〇〇―〇〇〇〇  ※申請した人の電話番号
添付情報  登記原因証明情報 ※遺言書及び相続関係の戸籍等
住所証明情報 ※不動産を取得する人の住民票
課税価格  金〇〇〇万円 ※不動産の固定資産評価額の千円未満切り捨てした額 
登録免許税 金〇円 ※課税価格×4/1000の百円未満切り捨てした額 
不動産の表示
 所  在 金沢市〇〇町
 地  番 〇〇番
 地  目 宅地
 地  積 123・45平方メートル
 所  在 金沢市〇〇町〇〇番地
 家屋番号 〇〇番
 種  類 居宅
 構  造 木造かわらぶき2階建
床 面 積 1階 56・78平方メートル
     2階 56・78平方メートル

なお、遺言書、相続関係の戸籍等、及び住民票などの添付書類は、コピーと原本を提出することで、後で原本を返してもらうことができます。

その場合は、コピーに「原本と相違ありません。金沢〇子 印」と記入及び押印します。

コピーが複数ある場合は、一番上のコピーに上記の記入及び押印し、あとのコピーはそれぞれ、契印(各ページのつづり目に押印)します。

この手続きを原本還付手続きと言いますが、この手続きをしないと原本が返ってこないのでご注意ください。

6.注意すべきポイント

自筆証書遺言が無効の場合、遺産分割協議をしなければならなくなりますので、作成の際には、専門家にご相談することをおすすめします。

登録免許税が免除される場合は、その根拠条文を記載する必要があります。登録免許税は、登記申請書とつづり目に契印した用紙に、収入印紙を貼り付ける方法により納付します。このとき、消印や割印はしないでください。

7.まとめ

遺言は生前であれば、何度でも書き直すことはできます。しかし、当然ですが、死後には書き直すことはできません。したがって、いかに生前に準備をしておくかが、相続手続きをスムースに行う上で重要になります。財産をどうやって特定し、どういう風に書けば良いのか、間違ってしまうと遺言書に無効になってしまいます。

金沢の「まるっと相続」では法律税務を含めて全般的な相続サポートを提供しています。お悩みの事項がありましたらお気軽にご相談ください。

この記事を書いた人

司法書士
山田達也(Tatsuya Yamada)
いきいき司法書士事務所所属

昔から、よく道を聞かれたり、知らない子どもに話しかけられたりしていました。

私の風貌が、人よりも少し、話しかけやすいのかも知れません。

相談される方が、何でも話しやすいよう心がけています。お話しをされた方が、すっきりしたお顔になったり、喜んでいただけると私も嬉しいです。お気持ちが楽になったら、専門的なアドバイスをさせていただきます。より専門的なアドバイスができるよう、複数の資格を取得しました。難しい問題の解決はおまかせください。

2005年司法書士登録、2017年マンション管理士登録、2018年行政書士登録、2019年宅建業登録。

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