自分で遺産分割による相続登記をする方法を司法書士が解説

不動産を所有していた人が亡くなったら、相続人等に名義変更しなければなりません。これを相続登記と言います。以前は所有権などの権利の登記をすることは、文字通り権利であって、義務ではありませんでした。しかし、令和6年4月1日から、この相続登記は義務化されます。相続登記を怠った場合、10万円以下の過料の対象となります。

今回は、相続登記の中で最も一般的な、遺産分割による方法について、司法書士が解説します。

1.まずは相続人を確定させます。

相続登記で、まず始めにすることは、相続人を確定することです。誰が相続人か確定していないと、遺産分割協議ができないからです。相続人を確定させるには、亡くなった方の、生まれてから亡くなったときまでの、戸籍を集めなくてはなりません。この戸籍は、亡くなった方が本籍を置いていた市町村で取れます。途中で他の市町村に、本籍を動かしていた場合は、その市町村で取る必要があります。郵送でも取る事が出来ますので、インターネットで「〇〇市 戸籍 郵送」で検索してみてください。なお、戸籍については、戸籍謄本と戸籍抄本がありますが、亡くなった方の戸籍の場合は、相続人を調べたいので、他の人の記載がある戸籍謄本を取得してください。また、戸籍には、原戸籍や、除籍謄本など、色々種類があるので、窓口では、「相続手続きで使いたいので、〇〇の生まれてから亡くなったときまでの戸籍全てが欲しい」と、用途と理由を伝えると間違いが少ないです。郵送の場合は、メモ書きを添えるなどして、伝えてください。

これで、亡くなった方の、生まれてから亡くなったときまでの戸籍が集まったら、今度は、各相続人の戸籍を取ります。(関連記事:相続人と相続分)なお、相続人によって必要な戸籍類が違いますので、ご注意ください。自分以外の戸籍は、それぞれ、各自に取ってもらうのがいいでしょう。各相続人には印鑑証明書を取ってきてもらう必要があるので、そのついでに、戸籍も取ってきてもらいましょう。なお、各相続人の戸籍は、戸籍抄本で大丈夫です。戸籍抄本はその相続人だけが載っています。

さあ、これで集まった書類は以下になります。

  • 亡くなった方の生まれてから亡くなったときまでの戸籍謄本
  • 各相続人の戸籍抄本等
  • 各相続人の印鑑証明書

これで、相続人が確定しました。

2.法務局で登記事項証明書(登記簿謄本)を取得します。

法務局で相続の対象となっている不動産の登記事項証明書を取得します。不動産の特定は、毎年役所から送られてくる、固定資産税納税通知書に、課税明細書がありますので、それを参考にします。土地であれば、所在地と地番、建物であれば、所在地と家屋番号がわかれば、取得できます。

3.相続人間で遺産分割協議をします。

相続人が確定したら、次はその確定した相続人全員で、遺産分割協議を行います。必ず全員で行います。そして、相続人本人が協議に参加してください。相続人が未成年の場合には、法定代理人である父又は母が、協議に参加します。相続人が認知症等により、意思能力が失われている場合には、成年後見人等の選任を家庭裁判所に申立てる必要があります。

遺産分割協議を行ったら遺産分割協議書を作成しましょう。

遺産分割協議書作成にあたっては、2.で取得した登記事項証明書を参考に、物件の情報を間違いなく記載します。

遺産分割協議書の例

一例ですので、協議の内容に応じて作成してください。

遺産分割協議書

被相続人の表示
 最後の本籍   石川県金沢市〇〇町〇〇番
 最後の住所   石川県金沢市〇〇町〇番号
被相続人     金沢〇太郎
相続開始の日  令和〇年〇月〇日
相続人の表示  後記相続人署名欄記載のとおり
遺産分割協議事項
 次のとおり被相続人の遺産を分割した。
1、 下記の相続財産中、(1)乃至(3)を相続人、金沢〇子が取得する。
2、 本協議書に記載なき財産および、将来発見されるべき財産は、全て、相続人、金沢〇子が取得する。
 上記のとおり、本日、被相続人の遺産分割の協議が成立したので、相続人全員、末尾に署名押印する。

(1) 金沢市〇〇町〇〇番 宅地 123・45㎡
(2) 金沢市〇〇町〇〇番地  家屋番号〇〇番
 居宅 木造かわらぶき2階建
 1階 56・78㎡ 2階 56・78㎡ 
(3) その他全ての不動産
以上
   令和  年  月  日
住所 金沢市〇〇町〇〇番地   金沢〇子  実印
住所 金沢市〇〇町〇〇番〇号  金沢〇次郎 実印 

さあ、これで以下の書類ができました。なお、不動産を取得する相続人は、住民票を取得しておきましょう。

これで以下の書類ができました。

  • 遺産分割協議書
  • 不動産を取得する相続人の住民票

4.法定相続情報を作成します。

法定相続情報を作成し、法務局に保管及び交付の申出をします。(関連記事:法定相続情報証明制度)これをしなくても、相続登記はできますが、最初に作っておくと、相続関係説明図の作成も不要になりますし、預金等の解約も同時並行して進められますので、最初に作っておくことをおすすめします。

ちなみに、相続関係説明図とは、相続関係を記した図のことで、登記申請時に提出することにより、同時に提出した戸籍類を、登記完了後に返してもらえるという利点があります。ただ、法定相続情報一覧図がある場合には、そもそも、登記申請時には戸籍は提出しませんので、相続関係説明図は不要になります。

これで、以下の書類ができました。

  • 法定相続情報

5.登記申請書を作成します。

さあ、これでいよいよ、相続登記に必要な書類が揃いました。

登記申請書の作成に入ります。

一例です。内容に応じて変更してください。

登記申請書

登記の目的 所有権移転
原   因 令和〇年〇月〇日相続 ※亡くなられた日
相 続 人 (被相続人 金沢〇太郎) ※亡くなられた人の氏名
      金沢市〇町〇番〇号 金沢〇子 印 ※不動産を取得する人の住所と氏名
連絡先の電話番号  〇〇〇〇-〇〇〇―〇〇〇〇  ※申請した人の電話番号
添付情報  登記原因証明情報 ※遺産分割協議書、印鑑証明書、法定相続情報等
 住所証明情報 ※不動産を取得する人の住民票
課税価格  金〇〇〇万円 ※不動産の固定資産評価額の千円未満切り捨てした額 
登録免許税 金〇円 ※課税価格×4/1000の百円未満切り捨てした額 
不動産の表示
 所  在 金沢市〇〇町
 地  番 〇〇番
 地  目 宅地
 地  積 123・45平方メートル

 所  在 金沢市〇〇町〇〇番地
 家屋番号 〇〇番
 種  類 居宅
 構  造 木造かわらぶき2階建
床 面 積 1階 56・78平方メートル
     2階 56・78平方メートル

なお、遺産分割協議書、印鑑証明書、住民票、法定相続情報などの添付書類は、コピーと原本を提出することで、後で原本を返してもらうことができます。

その場合は、コピーに「原本と相違ありません。金沢〇子 印」と記入及び押印します。

コピーが複数ある場合は、一番上のコピーに上記の記入及び押印し、あとのコピーはそれぞれ、契印(各ページのつづり目に押印)します。

この手続きを原本還付手続きと言いますが、この手続きをしないと原本が返ってこないのでご注意ください。

6.注意すべきポイント

相続人の確定を間違えてしまうと、遺産分割協議が無効になる恐れがありますので、ご注意ください。特に亡くなられた方に、お子さんがいない場合は、相続人が多くなるなど、特定が難しくなりますので、専門化にご相談ください。

登録免許税が免除される場合は、その根拠条文を記載する必要があります。登録免許税は、登記申請書とつづり目に契印した用紙に、収入印紙を貼り付ける方法により納付します。このとき、消印や割印はしないでください。

7.まとめ

相続登記の申請自体は決して難しくありません。しかし、その前提となる相続人が誰であるか、遺産分割協議で何を決め、どう記せば良いか、など実は難しい論点がたくさんなります。金沢の「まるっと相続」では法律税務を含めて全般的な相続サポートを提供しています。お悩みの事項がありましたらお気軽にご相談ください。

この記事を書いた人

司法書士
山田達也(Tatsuya Yamada)
いきいき司法書士事務所所属

昔から、よく道を聞かれたり、知らない子どもに話しかけられたりしていました。

私の風貌が、人よりも少し、話しかけやすいのかも知れません。

相談される方が、何でも話しやすいよう心がけています。お話しをされた方が、すっきりしたお顔になったり、喜んでいただけると私も嬉しいです。お気持ちが楽になったら、専門的なアドバイスをさせていただきます。より専門的なアドバイスができるよう、複数の資格を取得しました。難しい問題の解決はおまかせください。

2005年司法書士登録、2017年マンション管理士登録、2018年行政書士登録、2019年宅建業登録。

ページの先頭へ
menu