株式の評価方法について
遺産の中に株式が含まれていたら、評価額を明らかにしなければなりません。
株式の評価額がわからないと、公平に遺産分割協議を進めるのも難しくなってしまいます。
今回は、相続時の株式評価方法を解説していきます。
1.株式の評価方法は上場株式と非上場株式で異なる
株式の評価方法は、上場株式と非上場株式とで異なります。
上場株式とは、証券取引所に上場している株式です。上場株式の場合、取引価額が明確になるので評価は比較的容易です。
非上場株式とは、証券取引所に上場していない非公開の株式です。この場合、専門的な計算方法を用いて評価しなければなりません。
以下で、それぞれについての株式評価方法をみていきましょう。
2.上場株式の評価方法
上場株式の場合、基本的には「遺産分割時の取引価額」を評価額とします。
取引価額としては、証券取引所が公開している株式の終値を基準にします。
終値とは、1日の最終の取引価額をいいます。日本では午後3時に取引が終了するので、午後3時の時点における取引価額が終値となります。
2-1.終値の調べ方
上場株式の終値は、各証券会社のサイトやYahoo!ファイナンスなどの株式情報サイトで確認できます。株式の名称をキーワードにして検索すると終値を調べられるので、確認したいときに利用しましょう。
2-2.株式の評価基準時
遺産分割における株式の評価基準時は遺産分割時です。
たとえば、遺産分割協議で遺産分割方法を決めるなら、遺産分割協議が成立した日が基準日です。遺産分割調停で遺産分割方法を決めるなら、遺産分割調停が成立した日を基準とするのが原則です。
自分たちで株式評価額を調べるときにも、評価のタイミングは「遺産分割時」とすべきことをおぼえておきましょう。
2-3.遺産分割時が土日祝日の場合
遺産分割を行う日が土日祝日の場合、証券取引所が開いていません。その日の終値を明らかにできないので問題になります。
この場合、遺産分割協議や調停が成立した日ともっとも近い日の終値を基準にしましょう。
たとえば、土曜日に遺産分割協議が成立した場合、直前の金曜日の価額を基準にして評価すれば問題ありません。
なお、遺産分割協議や調停で解決する場合には、相続人が全員合意すれば評価基準時も自由に決められます。厳密に「遺産分割時ともっとも近い日」にする必要はなく、たとえば、「直近の価額」を用いてもかまいません。
2-4.相続税評価額を用いるケースもある
株式の評価をするとき、相続税評価額を用いるケースもよくあります。
相続税評価額とは、相続税を計算する際に適用する評価額です。
上場株式を相続税評価する場合、以下の4つのうちもっとも低い価額を選んで基準にすることができます。
- 相続開始日の終値
- 相続開始日の属する1か月間における終値の平均額
- 相続開始日の月の前月の1か月間における終値の平均額
- 相続開始日の月の前々月の1か月間における終値の平均額
また、遺産分割をする際には「もっとも低い価額」にこだわる必要はありません。上記のうち相続人が合意しやすい価額を評価額とすることも考えられるでしょう。
2-5.月ごとの終値の平均値の調べ方
1か月における終値の平均値は、日本取引所グループのサイトにおける「月間相場表」で調べられます。
https://www.jpx.co.jp/markets/statistics-equities/price/
株式の相続税評価が必要な際には参照しましょう。
3.非上場株式の評価方法
非上場株式の場合、株式に取引価額がありません。上場株式のように「終値」を基準にできないので、専門的な評価方法を用いて株式評価額を求める必要があります。
遺産分割で非上場株式を評価する際には「相続税評価時に適用する評価方法」を使うケースが多数です。
具体的には「純資産価額方式」「類似業種比準方式」「配当還元方式」という方法を用います。
3-1.純資産価額方式
会社の純資産価額を基準にする株式評価方法です。会社の資産から負債や法人税などを差し引いた金額を株式数で割算して計算します。
相続人がいわゆる同族株主になる場合で、主に小会社の場合に適用される手法です。
3-2.類似業種比準方式
類似業種比準方式は、類似する業種の事業を営む会社群の株式価額をもとに評価する方法です。
評価対象会社の1株あたりの配当金額や利益金額、純資産価額の3つの項目を比較して評価額を明らかにします。
相続人がいわゆる同族株主になる場合で、主に大会社の場合に適用される株式評価方法です。
3-3.中会社の場合は両者を併用
相続人がいわゆる同族株主になる場合で、中会社の場合には、純資産価額方式と類似業種比準方式を併用して株式評価額を明らかにします。
3-4.配当還元方式
配当還元方式は、会社の配当金額を基準として、これを発行済株式数で割算して計算する方法です。
同族株主にならない場合には、配当還元方式によることとされています。配当還元方式を適用すると、純資産価額方式や類似業種批准方式よりも株式評価額が低くなりやすい傾向があります。
4.株式の評価は専門家へお任せ
株式を評価する際には、専門的な計算をしなければなりません。
評価基準時も遺産分割時と相続税評価時で異なるので、間違えないように注意が必要です(遺産分割の際は遺産分割時、相続税評価の場合は相続開始時)。
非上場株式を評価する際には、税理士などの専門家の関与が必須となるでしょう。
金沢の「まるっと相続」では遺産分割や相続税申告を各種の専門家が全面的に支援しています。株式などの遺産を相続して対応や計算方法に迷われたときには、お気軽にご相談ください。