死後事務委任契約とは?遺言との違いや専門家に依頼するメリットを解説

自分の死後の事務処理について「死後事務委任契約」を利用する方が増えています。死後事務委任契約とは、委任者の死後のさまざまな事務について第三者へ委任する契約です。

特に、死後に事務処理をしてくれる人のいない「おひとりさま」の相続の場合などに死後事務委任契約が利用される例がよくあります。

死後に周囲の人に迷惑をかけたくない方やおひとりさまの方などは、ぜひ死後事務委任契約を検討しましょう。

死後の手続きが心配な方や自分の希望通りに葬儀を出したい方、死後にPCやスマホの情報をコントロールしたい方などはぜひ参考にしてください。

1.死後事務委任契約とは

死後事務委任契約とは、委任者が死亡した場合の葬儀、役所への各種届出や病院代の精算などの各種手続きを第三者へ任せる契約です。

死後事務委任契約を締結しておくと、委任者が死亡したときに相続人や周囲の人に手間をかけずに済みます。特に子どものいない方や相続人がいても疎遠な方などは、死後事務委任契約を利用して誰かにまとめて事務手続きを依頼しておくと安心感があるでしょう。

1-1.死後事務委任契約と法律

死後事務委任契約は、法的には委任契約の一種に位置づけられます。

法律上、委任者が死亡すると委任契約は終了すると規定されています。ただ、最高裁判所は「特約がなくても委任者が死亡した場合に委任契約が終了しないケースがある」と判示しており、現在では死後事務委任契約の有効性については法的な問題はないと考えられます(最高裁平成4年9月22日判決)。

1-2.死後事務委任契約で依頼できること

死後事務委任契約を利用すると、以下のようなことを第三者へ依頼できます。

  • 行政関係の届出(死亡届の提出や健康保険・年金の資格抹消届など)
  • 親族や友人などへの連絡
  • 葬儀や埋葬
  • 病院・施設費用の精算
  • 賃貸住宅の家賃精算や明渡しなどの対応
  • 電気ガス水道などの光熱費の精算や解約手続き
  • 生前に利用していたSNSやブログなどの閉鎖、解約
  • PCやスマートフォン内の情報消去

死後に上記のようなことが心配な場合、死後事務委任契約を検討すると良いでしょう。

2.死後事務委任契約と遺言の違い

死後事務委任契約でできることと遺言でできることは大きく違います。

以下で、死後事務委任契約と遺言の違いをみていきましょう。

2-1.死後事務委任契約は遺言でできないことも実現できる

遺言でできることは、法律上限定されています。主に財産承継方法の指定が遺言作成の目的になります。遺言では「葬儀の方法の指定」や「SNSやブログの閉鎖」「PC情報の廃棄」などは誰かに任せられません。

死後事務委任契約の場合、委任できることに法律上の限定がないので、自由に委任する内容を指定できます。

2-2.死後事務委任契約には要式がない

遺言は厳格な要式行為であり、要式に従わないと無効になってしまいます。

死後事務委任契約には要式はありません。口頭であっても当事者同士が合意すれば、契約が成立します。遺言と違って要式違反で無効になる可能性がありません。

なお、死後事務委任契約であってもトラブル防止のため、契約書を作成すべきです。

2-3.死後事務委任契約では相手方が必要

遺言は単独行為なので、遺言者がひとりで作成できます。一方、死後事務委任契約の場合には契約なので、受任者となる第三者が必要です。

以上のように遺言と死後事務委任契約はそれぞれ異なる役割を担うものです。
両方を併用することにより、効果的な遺産相続対策が可能となるでしょう。

3.死後事務委任契約のメリット

死後事務委任契約には、以下のようなメリットがあります。

  • 自分で死後の手続きや諸々の事柄について決定し、実現できる
  • 相続人などの家族の負担を減らせる
  • 専門家に死後事務を委任しておくと、親族間のトラブルを予防しやすい

4.死後事務委任契約を利用すべき状況とは

以下のような状況であれば、死後事務委任契約の利用をおすすめします。

4-1.相続人がいない場合

相続人がいない場合、死後事務委任契約を利用するメリットが大きくなります。

死後に誰も各種手続きをしてくれないからです。

何もせずに死亡すると、賃貸物件の大家や病院、介護施設の方、行政などの方に迷惑をかけてしまう可能性が高いでしょう。

相続人がいない場合、死後事務委任契約の利用を検討しましょう。

4-2.相続人に任せると、希望どおりにならない可能性が高い場合

相続人がいても、必ずしもご本人の希望通りに対応してくれるとは限りません。

葬儀の方法など、本人の希望と異なる対応をされる可能性もあります。

そのような場合、確実に自分の意思を実現してくれる受任者と死後事務委任契約を締結するメリットが大きくなります。

4-3.相続人に負担をかけたくない場合

子どもなどの相続人がいても、迷惑をかけたくない方が多くいらっしゃいます。

そのようなとき、相続人以外の人と死後事務委任契約を締結していたら、受任者がすべての手続きを行うので相続人に負担をかけずに済みます。

5.専門家と死後事務委任契約を締結するメリット

死後事務委任契約の受任者は親族などの一般の方であってもかまいません。

ただ、弁護士などの専門家に委任する方が、各種の手続きをスムーズに進めやすくなるものです。

また、親族に死後事務を委任すると、反対する親族が現れて対立してしまう可能性もあります。専門家に委任すると、こうした親族間のトラブル予防効果も期待できます。

弁護士は遺産相続のプロフェッショナルであり、各士業の中で唯一、紛争解決能力も備えています。死後事務委任契約を利用するなら、トラブルを防止する意味でも弁護士に委任するのが良いでしょう。

金沢の「まるっと相続」では弁護士や税理士、司法書士などの専門家が一丸となって相続案件に取り組んでいます。死後事務委任契約の受任も承りますので、気軽にご相談ください。

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